
人は,ずっと信じていたことと全く違うことを言われると、そんなはずはないと反射的に拒否してしまう傾向がある。それをセンメルヴェイス反射という。現在、新型コロナによって手の消毒の重要性が改めて見直されているが、実は,この反射の名称は約150年前初めてそのことを提唱した医師の名前から付けられている。
19世紀中頃、ハンガリー人のセンメルヴェイス・イグナーツはウィーン総合病院の産科病棟に勤務。第1産科では産婦の産褥熱による死亡率が高く、第2産科では低かった。第1産科では主に医師が、第2産科では助産婦が、それぞれ素手で分娩を行っていた。調査の結果、手が清潔かどうかで死亡率が変わると推測した。当時は、まだ細菌の存在が分からなかった時代である。試しに第1産科で手の消毒を徹底させたところ、死亡率は明らかに低下した。他の病院でも同じ結果がでた。センメルヴェイスは手についた何らかの微粒子が問題だと確信し、上司や同僚医師、学会にも手の消毒の大切さを訴えた。にもかかわらず、当時は誰も認めようとしなかった。
それは、なぜか?自分の間違いを認めれば、今まで自分が築き上げた功績や権威が無になってしまう。しかも、こんな基本的なことを知らなかったために、今まで多くの産婦が命を落としたことになる。そんなことは絶対認められないのである。多くの学者や医師はセンメルヴェイスの説を反射的に拒絶した。その後、彼の説が日の目を見たのは、死後20年経ってパスツールが細菌と病気の関係を発見してからである。
昔のことだから仕方ないと思うなかれ。現在の日本でも、同様の現象があちこちで見られていると思うが、皆さんはどう思われるか?
ここで、謎掛けを一題。
「石頭」と掛けて、「古時計」と解く、その心は・・・「どちらもコチコチ」