健康アラカルト(64) ピロリ除菌は胃炎患者に必要か?

2014年 5月 1日
院長 大石 孝

昨年より、ピロリの除菌が、胃炎に対しても保険適応となった。 ピロリ菌は、胃炎の原因であり、胃潰瘍再発や胃癌のリスクを高めると言われている。 したがって、全てのピロリ陽性患者の除菌ができれば、胃炎も改善し、 潰瘍も再発せず、胃癌も無くなり、こんなにいい話はない。 そのため、国を挙げて、ピロリを見つけ次第撃退しろという命令が下されたわけである。

しかし、本当にそれは正しいことなのか? ピロリ菌感染者は、日本人の半数の約6000万人で、ピロリが原因なら、 そのほとんどは胃癌になるはずだが、実際には、胃癌の発生率は年間10万人程度である。 ピロリ菌以外にも原因があるからである。故に、仮にピロリ感染者を全員除菌できても、 胃癌はゼロにならないし、胃内視鏡検査が不要にもならない。 除菌のコストも、該当者全員を対象にすれば、膨大なものになる。 限られた医療財源はもっと有効に使った方がいい。

除菌を胃炎に適応するな!なんて、そんなこと今さら”いえん(・・・)”にしても、 もっと対象を絞るべきで、それ以外は自費診療にすべきである。 ピロリ菌が胃炎の原因であるとしても、あたかも胃癌の唯一の原因であるかのように言うのは、 如何なものか?

一般の医師が無条件にピロリ菌陽性患者に対し除菌を行ってしまうことを危惧する。 なぜなら、除菌は多めの抗生剤を服用するため、時に副作用を起こす。 多くは、中止すれば治るが、まれに重篤な副作用を起こす。 除菌は、マイナス面もあることを考慮し、本当に必要な患者のみにすべきである。

今月の標語。「ピロリ菌 よくよく考え 退治せよ」

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