2014年 7月 1日
院長 大石 孝
現在、主な病気に対しては、それぞれの専門学会によってガイドラインが作成されていることが多い。これは、医師の好みで診断や治療法が左右されず、できるだけ世界基準とも違わず、日本のどこに居ても共通の診断と治療が受けられるようにするためである。このガイドラインの存在により、大病院でも小さな診療所でも、都会でも田舎でも、医療格差をなくす事が可能になるという点で、有意義なものと考えられる。
問題は、このガイドラインが絶対的に正しいのかどうかということである。
例えば、高血圧も糖尿病も高脂血症も、以前は、大規模調査の結果に基づき、「低ければ低いほど良い」という考えの下、正常値が低く設定され、できるだけ正常値以下にするよう、ガイドラインが作られた。しかし、その後の調査で、厳格に管理しても、ゆるく管理しても、大きな違いがなく、むしろゆるく管理した方が、生命予後がいい場合もあることが判明してきたため、最近になり、次々と管理目標値が緩められることになった。例えば、2014年のガイドラインでは、血圧は、一般に130/85未満としていた治療目標を140/90未満に、後期高齢者では、140/90未満を150/90未満に引き上げた。
この意味するところは、ガイドラインを鵜呑みにして一律に治療を行うと、場合によっては、患者さんに不利益な結果をもたらす可能性があるということである。病人でないのに病人としたり、不必要な治療をしたりすることに繋がりかねない。これでは、ガイドラインではなく、ガイド・ライ(ウソ)!になってしまう。医師は、ガイドラインを参考にしつつも、個々に合わせた治療をやってゆくことが大切ではないかと考える。
