健康アラカルト(77)細菌は悪者か?

2016年 5月 1日
院長 大石 孝

細菌と聞けば、汚いもの、排除すべきものと考えてませんか?確かに、様々な感染症の原因は、細菌によるものであり、時に、ヒトを死に至らしめる。細菌なんていない方がいいと思いたくなるが、それは、果たして正しいのだろうか?

細菌だからといって、人類との付き合いは、最近(・・)の話ではない。人類は大昔より、消化管、皮膚、生殖器等で多様な細菌の宿主となってきた。ヒト1人に寄生している細菌の数は、地球上の全人口より多い。どんなに肌がきれいに見える美人であっても、目に見えないだけで細菌だらけである。ヒトに寄生する細菌叢の構成は、1人1人独自に、しかも、幼児期までに決定されるという。

ヒトとともに、古代からある細菌は、そこに存在する理由があり、人の進化にも関わってきた。皮膚に存在する細菌も皮膚の防御機構に役立っているし、ピロリ菌も胃炎や胃がんを起こす悪い菌とされているが、実は、古代からヒトの胃に存在しており、食道炎や食道がんを予防していた可能性がある。腸内細菌は、食物繊維を分解したり、ビタミンを合成するのみならず、免疫系の主役を務めており、現代病とも言われる肥満や糖尿病、アレルギー疾患、炎症性腸疾患を抑制している可能性がある。したがって、ほとんどウイルスが原因である風邪に対して安易に抗生剤を使用することは、無駄というだけでなく、微妙なバランスを保っている大切な腸内細菌を破壊してしまうことになる。破壊されたものを復活させるのは容易なことでなく、これが繰り返されることで、様々な病気を引き起こしている可能性がある。古来淘汰を繰り返しながらヒトと共生してきた細菌は、人体に何らかの有益なものをもたらしているわけで、むやみやたらに殺菌していいわけがない。

最後にバイキンマンより1句。「バイキンと 共に生きるが ヒトの道」

pic_f049