2016年 9月 1日
院長 大石 孝
一時期、週刊誌に、「医者に出されても飲みつづけてはいけない薬」の連載が世間を賑わせていた。生活習慣病や認知症、精神疾患等の薬について、その効果を疑問視し、副作用を強調して、だから飲んではいけないとの論法であった。
当然、副作用のない薬はなく、同じ量でも個人差があり、人によって薬にもなれば毒にもなる。薬は異物であり、飲まなくてよければ飲まないに越したことはない。少し血圧が高いとか、コレステロールが高いというだけで、すぐ薬を欲しがる人がいるが、それは間違いであり、なるべく食生活の改善で様子を見た方がいい。
薬が必要になるのは、異常(値)があり、それを改善するためであるが、そもそも年齢を無視した正常値なるものが、本当に正しいのか疑問がある。ようやく最近、高血圧、糖尿病、高脂血症とも、治療目標値が緩めに見直されてきたが、年齢への考慮は不十分である。一律に正常値に近づけることや昨今の「病気を早期に見つけて早期に治療する」という風潮が正しいとは限らない。わずかな異常を以って病人に仕立て上げ、すぐ薬物療法を行おうとすることには疑問を感じる。薬で助けられている人が大勢いるのも事実であるが、不要な薬を飲まされている人が少なからずいるのも事実であろう。そういう意味で、週刊誌の警告にも一理はある。
では、どうしたらいいか?生活習慣病のように、長期に服薬が必要なものは、メリットがデメリットを上回る時に飲むことになる。初めて薬を投与する時は慎重に、新薬は副作用についての経験が少ないので安易に投与しない、すでに投与中の薬でもなるべく減らす努力をする、以上が薬で治療する際の原則ではないだろうか?クスリを逆から読むと、リスクと読める。飲んではいけない薬はないが、「クスリはリスク」と覚えておいた方が良い。ん?そこは、クスリと笑うところではありません!
