2017年 7月 1日
院長 大石 孝
明治期には脚気患者が、特に兵士の間で多く発生し、社会問題になっていた。脚気は、浮腫、心不全、神経障害等を起こし、死に至る病気であった。イギリス医学を学んだ海軍軍医の高木兼寛(かねひろ)(慈恵医大の創始者)は、脚気は欧米には発生しないこと、長期航海中に多発するが、港停泊中(洋食を摂取)は少ないことに注目し、白米中心で蛋白質が少ない集団に起きやすいと推測した。そこで、前年に長期航海演習で乗組員の約1/2が脚気になった対策として、翌年、同じ航路の演習に際し、白米を一部パンにし、肉卵等の蛋白質を十分とる食事内容に変更し、実験を行った。その結果、脚気発生は極少数となり、その原因が食事にあることを突き止めた。パンを嫌う兵士の対策として、米に麦を混ぜたところ、海軍全体でも脚気発生は激減した。
一方、陸軍(東大系)は、ドイツ医学の影響が強く、脚気細菌説を唱えていた。脚気が減ったのはあくまで偶然として脚気栄養説を拒否し、白米中心の食事に固執した。その中心人物が軍医総監石黒忠悳(ただのり)と森林太郎(鴎外)であった。その結果、日清・日露戦争における脚気発生は、海軍ではいずれも少数だったのに対し、陸軍では、前者で3万人(死者4千人)、後者で21万人(死者3万人)という悲惨なものとなった。なんと陸軍は、その後も過ちを認めようとしなかった。最終的に、鈴木梅太郎がオリザニン(のちのビタミン)という新栄養成分を発見し、脚気治療に有効なことを発表し、決着がついた。
この「陸軍の誤りを認めない体質」が、決して過去の事ではなく、実は現代でも、社会の至る所で垣間見えるのは、大変残念なことである。
では、ここで、時事3択問題です。以下の○に当てはまるものはどれか?
「ソーリ(夫人)の意向を○○する」ヒント:これが出来ない官僚は出世できません!
①無視、②一考、③
正解③
