健康アラカルト(85)薬のやめどき

2017年 9月 1日
院長 大石 孝

先頃発表された日本人の平均寿命は、男性81才、女性は87才で、人生85年の時代になったと感じる。長寿になった原因は、平和な時代が続いたこと、栄養状態が良いこと、医療の進歩ということになろうか?

さて、高齢者が多くなる中で、特に生活習慣病関連の薬をいつまで処方し続けて良いのか、悩むことが多い。薬を開始する時期や使い方についてのガイドライン(指針)があっても、高齢を理由にいつ止めたらよいかについては全く指針がない。例えば、高脂血症であれば、薬の開始時期の基準はあっても、やめてよい基準はない。果たして、80才、90才になった人が飲み続ける妥当性はあるのだろうか?高血圧にしても同様。脳梗塞や心筋梗塞等の合併症を減らすために、血圧を低く保つということになっているが、80代~90代の高齢者についても同じことが言えるというデータはない。かえって、ふらつき、転倒、脳梗塞、意欲低下、認知症等の副作用の方が問題になるのではないか?

デリケートな問題で結論は簡単に出せないと思うが、老人医療費高騰、保険財政の破綻にも関わり、近い将来、考えざるを得ない問題である。保険医療をやめる方向ではなく、過剰な医療をやめる方向に持っていかなくてはならない。薬には必ず副作用があり、高齢になればなる程、副作用は出やすくなる。デメリットが大きくなる時点を判断し、薬を減量中止にしてゆく勇気が必要である。強いて余分なことはせず、本人の生命力に任せるというのも、医療のあるべき選択肢の1つではないだろうか?

ここで、謎かけを1つ。
「高齢者の運転免許証」と掛けて、「高齢者の薬」と解く、その心は、・・・「どちらもやめどきが肝心」

201709