健康アラカルト(88)鉄と人類の関係

2018年 3月 1日
院長 大石 孝

人類にとっての鉄と言えば、製鉄によって作られる鉄の固まりを思い浮かべるだろう。製鉄技術は、紀元前15世紀頃、現在のトルコ地域にあったヒッタイト王国で生れ、我国には5~6世紀頃、朝鮮半島を経由して伝わったとされる。砂鉄や鉄鉱石(いずれも酸化鉄で存在)を木炭で加熱、脱酸素化(還元)し、強くて可塑性(かそせい)のある(はがね)を作る。我国で有名なのは、古代より連綿と続く奥出雲地方のたたら製鉄(・・・・・)(挿絵参照)で、古事記に出てくるスサノヲノミコトによるヤマタノオロチ伝説の舞台にもなった所である。鉄鋼のお蔭で、古代より、様々な道具、構造物、乗物、武器等が作られ、人類発展におけるその役割は計り知れない。

 

さて、固くて食べることのできない鉄のはずだが、実は人体の中にも鉄は存在する。地球誕生後、海中や大気中に酸素が作られるようになると、酸素を利用する生物が現れる。人類もその1つで、酸素を利用する時に使われるのが、鉄である。鉄と酸素が結びついたヘモグロビンが全身を駆け巡って酸素を届け、取り入れた栄養を燃やしてエネルギー源を作り出す。鉄が不足すると、ヘモグロビンが減って貧血になる。貧血になると、体内の酸素やエネルギーの不足が起こるので、動悸、息切れ、倦怠感等が起こる。植物や動物にも鉄は含まれるので、貧血の人は、緑黄色野菜、海藻類、青魚、レバー等を食べるとよい。鉄は、酸素を利用する一方で、人体に有害な活性酸素を無害化する役割も果たす。

鉄は人類にとって、身体の内でも外でもなくてはならない金属であることが改めて分かる。

ここで、なぞなぞを1題。「鉄は熱いうちに打て」というが、では、「打つと熱くなるもの」は何?

答え「博打」

201803