健康アラカルト(92)ゾウの時間、ネズミの時間

2018年 11月 1日
院長 大石 孝

alacarte92 東工大の本川達雄氏の書いた本のタイトルである。
ネズミは数年しか生きないが、ゾウは100年近く生きる。物理的時間で考えると、ゾウはネズミよりずっと長生きである。この体のサイズ(体重)と時間(寿命)との関係に何か法則があるのか、いろんな動物の体重と寿命を調べてみると、どうも「時間は体重の1/4乗に比例する」という法則が成立するらしいことが分かった。例えば、30gのハツカネズミと3トンのゾウでは体重が10万倍(約18の4乗倍に相当)違うので、時間は18倍違い、ゾウはネズミに比べ時間が18倍ゆっくりだということになる。ネズミは寿命が短いといっても、体内で起こる現象のテンポが速いので、一生を生きた感覚はゾウと同じ可能性がある。生物学では、体のサイズに応じて時間の単位が変わる。これを生理的時間と呼ぶ。時間は万物に平等なはずだが、ゾウにはゾウの時間が、ネズミにはネズミの時間、犬には犬の時間があるということになる。とても不思議な話である。決して、ネズミは短命だから不幸だとか、ゾウは長命だから幸せだとか、言えないのである。同じことがヒトの人生にも当てはまるかもしれない。

さて、1回の心拍の時間を見てみると、ネズミは0.1秒、ヒトは1秒、ゾウは3秒である。それぞれの動物の寿命を、この心拍の時間で割ると、哺乳類は、どの動物も一生の間に、心臓がおよそ20億回拍動することになる。つまり、20億回心臓が拍動したら、どの動物も死ぬことになる。ゾウでなくても、ゾ~とする話ではある。では、ヒトの中で、脈拍の遅い人と早い人、体重の重い人と軽い人では寿命が違うのか興味深いが、その答えは不明である。生物学の奥は深い。

ここで、唱歌を1曲。
♬ゾウ~さん、ゾウ~さん、お~鼻が長いのね♪
♬そ~うよ、(シン)ゾウ君の総理の座も長いのよ~♪
・・・字余りですが、これで、どうでしょうか(・・・・)!!