健康アラカルト(94)血圧はどこまで下げるべき?

2019年 3月 1日
院長 大石 孝

現在、我国の高血圧の推定患者数は4300万人で、まさに、高血圧症が国民病と言われる所以である。これは、20才以上の人口の4割を超える数字である。ちょっと考えてほしい。人口の4割を占める現象を、本当に病気としていいのだろうか?。

以前は、血圧の基準値は160/95mmHg未満であったが、2000年頃を境に、みるみる基準値が下がり、現在、血圧の基準値は140/90 mmHg未満であり、特定健診や後期高齢者健診では、130/85mmHg未満まで下がった。なんと理想的血圧は120/80mmHg未満としている。血圧が高いと、動脈硬化が進み、脳卒中や、心筋梗塞等になりやすくなるという理屈から、血圧は低い方がいいということになっている。それは、本当なのか?膨大なデータから導き出した理屈であるが、それを否定するデータも、実は存在する。人間ドックの集団でみると、高血圧といえるのはおよそ150/95mmHg以上というデータもある。加齢に伴い血圧は上がるが、これはある意味自然現象である。特に、高齢者に現在の血圧基準を当てはめると、全身への血流が滞り、かえって、ふらつき、めまい、腎機能障害、脳梗塞、認知症等の副作用を引き起こす危険性がある。少なくとも高齢者は、もっとゆる~い基準にすべきである。

循環器系の薬剤費は年間約1兆円もかかっており、このお金は、保険料や税金という形で、国民のみんなが支払っているものである。血圧の基準値、目標値を低くすればするほど、使われる降圧剤の量は増大する。医療費の面から言っても、今の高血圧の治療方針は見直すべきである。国民皆保険制度が崩壊する前に、循環器専門医に考え直してもらいたいと切に思う。

ここで、小噺を1題。 



旦那A「近頃血圧が高くって、薬飲めって言われたんだけど。」
旦那B「うちのかみさんも太っちまって、けつあつが高くなってね。」
旦那A「そりゃ大変だ。」
旦那B「お蔭で、しりに敷かれてます。」
旦那A「・・・?それは、ケツ(・・)圧ってことね。」 201903