健康アラカルト(95)コレステロールは低い方がいい?

2019年 5月 1日
院長 大石 孝

現在、我国の高脂血症の推定患者数は、3000万人と言われている。高脂血症は、動脈硬化の大きな原因であり、放置すると心血管疾患や脳血管疾患を引き起こすという前提で、コレステロールの基準値も下げられ、積極的に薬物で コレステロールを下げるようになった。2007年には、悪玉コレステロールと言われるLDLの正常値は、140mg/dl未満となり、2017年には120mg/dl未満となった。この基準値が正しいとすると、人間ドック受診者の約半数が異常とされてしまい、鎌ヶ谷市の特定健診においても、6割が異常と判定されてしまう。検診受診者の半数以上が異常とされる基準値は、本当に正しいのだろうか?

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そもそも、コレステロールは、ヒトの細胞膜の原料であり、脳の神経にも豊富に含まれ、ホルモンの原料でもあり、脂肪吸収に必要な胆汁酸の原料でもあり、人体に必要不可欠なものである。LDL は、新鮮なコレステロールを組織に運び、HDL(善玉コレステロール)は古くなったコレステロールを組織から回収する役割を果たしており、LDLだけを悪玉と呼ぶことは本当はおかしい。実は、コレステロールは動脈硬化の犯人ではないという説もあり、アメリカでは、LDLが190mg/dl以上で初めて治療対象になっていることをご存知であろうか?もしそれが本当なら、少なくとも、コレステロールをいくら低下させても良いと考えることは間違っている可能性が高い。

高脂血症の薬剤費は、年間3000億円とも言われている。コレステロールの基準値を下げれば患者数は増える。患者が増えれば、薬剤を出す確率は増大する。医療費の面から言っても、今の高脂血症の治療方針は見直すべきである。

ここで、ある会社での会話:

部下A氏「部長は、コレステロールのような方ですね。」
部長「なんだ、そりゃ?」
A氏「口が悪くて、みんなから悪者扱いされているけど、
本当は会社に必要不可欠の人ですから。」
部長「A君、君って人は・・・」-うれし涙を流す部長-