2013年12月1日
アドバイザー 加藤 洋男
NHKの大河ドラマはいつの間にか、あと僅かとなった。1年過ぎるのが早い。
このドラマ構成は、前半の会津藩の生きざまと、後半の新時代への切り開きになっていたが、前半の新政府軍に降伏するまでの老若男女が戦って死んでいくさまは、ドラマとはいえ辛い場面であった。
登場人物の中では、家老西郷頼母の生き方に共感を覚えた。
会津藩が幕府から京都守護職就任を要請されたとき、 幕末の混乱に巻き込まれることを懸念して辞退を進言したが、 藩主の逆鱗に触れて家老職を解任された。そして、 新政府軍に城下に侵入されても徹底抗戦を主張する藩士の多い中、藩主に恭順を勧めたため追放された。
勢いのよい意見が大勢を占める中で、一見弱気な意見は言いにくいが、それをものともせず己の信念を貫いたが退けられた。結果としては頼母の進言どおりに事態が運んでいたら、会津藩はもう少しよい方向になっていたのではと想像された。
とかく、強気の意見は言い易いが、「怖い」「畏れ」「臆病」など弱気と思われる意見は言いにくい。このような状況が、いつの世でも不幸を招くことは歴史が示している。
スポーツの世界でも、ボクシングの基本は恐怖心で、怖いからパンチをよける方法を必死で磨くようになる。怖いもの知らずの勇気より、怖いものを怖いと素直に認める 勇気が勝者の資質だそうである。
私たちの身の回りでも、車・自転車の運転や、機械などを使う仕事、自然災害への 対応などいろいろな場面で、危険を顧みない言動を恰好がよいと思う人がいるかも知れないが、それに伴う事故、災害などの悲劇は後を絶たない。
習慣や、馴れ、過剰な自信でなく、むしろ周囲の雰囲気に流されずに怖さを認識した冷静な行動の方がはるかに重要なことと思う。
中学校の時に所属した野球部の先生の話を思い出した。ご自分が結核を患った経験を踏まえ、「野球をやっているからといきがって雨にぬれたりしてはいけない。謙虚な 気持ちで身体を大切にすること」と言われた。
「畏怖」の気持ちをもった言動こそが、真に勇気あることであり、病気や危険から 自分の身体を守る基本となるのではないだろうか。