コーヒータイム(2) はやぶさ

2012年4月1日
アドバイザー 加藤 洋男

小惑星探査機”はやぶさ”のプロジェクトに挑戦した人々のドラマを描く映画が次々と上映されている。昨年「はやぶさ/HAYABUSA」、2月に「はやぶさ 遥かなる帰還」、3月に「おかえり、はやぶさ」である。

“はやぶさ”は、小惑星「イトカワ」の地表サンプル採集を目的に、2003年に打ち上げられた小惑星探査機で、世界初のサンプルリターンに成功して2010年に約60億 kmの旅を終えた。

映画は、その歴史的事業を遂行するプロジェクトチームが、幾多のトラブルに見舞われながらも、はやぶさを帰還させようと奮起する人々の情熱を描いたもので、多くの感動を呼んでいる。

渡辺謙主演の「はやぶさ 遥かなる帰還」は、音楽を辻井伸行さんが担当した。 辻井さんは視覚障害者だが、2009年にヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで、日本人初の優勝を遂げ、今や世界に注目される23歳のピアニストである。 ピアニストだが、作曲にも才能を発揮し、即興を得意として多くの名曲を残しつつある。しかし、ある時作曲の専門家から、即興ばかりだとパターンが決まり、広がりに限界が出来るので、作曲技法に基づいて作曲した方がよいとアドバイスされた。

ところが、即興だと泉の如く湧いてきたメロディーが、技法に基づくとピタリとメロディーが出てこなくなった。 映画の音楽を担当したのがこの時期であった。しかし、この苦悩を超越した暁の音楽は、映画を盛り上げ、素晴らしい感動を私たちに与える出来栄えとなった。

教育方法に、権威的教育と民主的教育があるという。例えばゴルフのシングルになるためには、自己流ではなく、初期の段階からよい指導者の権威的教育でフォームを徹底して作らないと不可能といわれる。 何の世界でも同様で、いわんや自分の身体の管理はなおさらだろう。