2015年12月1日
アドバイザー 加藤 洋男
師走に入ると、道を行き交う車や街を歩く人の動きが何となくせわしくなる。
今年の後半は、ノーベル賞のダブル受賞やラグビーワールドカップでの日本チームの善戦など明るいニュースはあったものの、大手企業の不適切会計やマンション等の杭打ちデータ流用、はては欧州自動車メーカーのデータ改ざんなど、やりきれない問題が頻発している。以前には、私たちが直接影響を受ける、食料についても不祥事が続いた。
過去からいろいろな不祥事に対してはそのつど立派なルールやチェックシステムが作られてきたと思うが、事件は跡を絶たない。
立派な対策もさることながら、もっと大切なのはおかしいことを「おかしい!」と言える企業の風土作りであり、それがなければ永遠に根本的解決はないと思う。永年かかって出来上がってしまった誤った風土を変えるのは簡単でなく、さらに永い年月がかかる。しかし、それを日々地道に積み重ねていけるかが企業の力であると思う。
先日、30人位の高齢者の散策集団に出会った。ところが歩行者専用信号がなく一般信号のみの十字路を、赤信号にもかかわらず渡っている。歩行を指示していたリーダーに「赤ですよ!」と声をかけたら、「一般信号は左右安全なら赤でも渡っていいのだ」と言う。あまりに自信満々なので、こちらも暫し逡巡したが、どうも理解し難いので交番のお巡りさんに確認した。「とんでもない。赤は赤です!!」。その後、事故にあっていないことを祈るばかりだが、この集団には二つの問題があると思う。
その一つはもちろんリーダーの誤った認識だが、さらに問題なことは、普通の判断が十分出来ると見受けられる30人の誰一人異議を唱えなかったことにある。リーダーを信頼するのは結構だが、集団になると兎角一人一人の意識が希薄になって全体の動きに流されることがある。
事の大小を別にすると、根っこは同類の問題が身の回りにもたくさんある。
日頃の仕事や社会生活で、間違った慣習や動向などに流されて、本来のルールやマニュアルやマナーを逸脱していることがままある。問題意識をもって間違いがないか見直すとともに、間違いに気づいたら勇気をもってそれを正すことが肝心ではないだろうか。
私たちの日常は、まずは社会の基本ルールを守り、毎年の健康診断をきちんと受けて心身の健康を図り、自身の何が問題なのかを正確に把握して対策を実践することから始まるのではないかと思う。