2020年 4月1日
アドバイザー 加藤 洋男
この季節は、新たに社会に巣立つ若者がいる一方で、定年退職される方も多い。定年はその日を無事迎えてお目出度い反面、永年の職場を離れる一抹の寂しさもある。定年による退職日は、各人の誕生月にその都度行われる所もあるが、その場合は4月生まれと早生まれの3月では1年も差が出て不公平だとの考えもあり、当年度に定年になった人をまとめて期末にする場合がある。公務員や企業の一部は後者で、3月末を以て一斉に退職となる。
日本では、かつては多くの企業が55歳定年だったが、1994年に60歳定年が法制化され、2012年に65歳まで何らかの形で継続雇用が義務化され現在に至っている。公務員の定年は2022年に65歳が法制化されようとしているが、苦しい年金財政を考えると、一般企業もその流れに沿う可能性が大きい。55歳定年時代の55歳は”それなり”の感じの方が多かったが、現在の60歳の方は若く”それなり”の感じは全くない。
諸外国の定年は、ドイツ・フランスは65歳(いずれ67歳)、韓国・タイ・マレーシアなどは60歳、アメリカ・イギリス・オーストラリアなどは年齢による就業制限は不可との考えで定年制はない。ただし、年金支給開始がアメリカ65歳(いずれ67歳)、オーストラリア70歳なので現実的には働くのはそこまでの例が多い。中国は未だに男女差があり、男性60歳・女性55歳だ。中国では女性が家事と孫の面倒をみている例が多いため、定年が延長されると仕事と家事の両立は負担が多いとのことで反発が強くて不人気のため、延長の動きは具体化していないという。他のいずれの国も年金財政が厳しいため、定年年齢は後ろ倒しが検討されている。
最近「オブジェ(置物)社員」という言葉が聞かれる。雇用延長したのはよいが、生き生きと仕事が出来ず、以前の部下の下で働くことをよしとしないなどにより、逆に企業の活力を低下させる社員をさしている。管理職経験者に多いようだが、次の時代を担う若手の成長のため役職定年は欠かせない。その解決は、年齢に関わらず専門性や実務能力を高めて、もう一度第一線に戻ってもう一働きする気概と訓練を持ってもらうしか方法はないと思われる。新技術がどんどん登場する時代で、これから定年に近づく方は大変と思うが、より生きがいを感じて生活出来るよう、心身の健康年齢を若くする努力をしつつ歳を重ねていきたいものである。