2020年 6月1日
アドバイザー 加藤 洋男
マスクが街に出回りだした。新型コロナウイルスの感染拡大以降、店頭からマスクが消えて久しいが、最近は居酒屋や金券ショップなど衛生用品とは無関係の店でも販売しており、価格も一時期の高値から随分下がっている。原因は中国の供給能力拡大によるものらしいが、品質的に問題な商品も多いという。しかし医療現場で使われる高品質のマスクはなお不足している。一般用マスク素材の不織布で40%、医療用サージカルマスクで70~80%が中国に依存している。震災の都度あらゆる分野で「1か所生産のリスク回避のため複数箇所での生産」の必要性が叫ばれながら、喉元を過ぎると忘れられてしまうのが残念だ。今回のような医療品の確保については民間に一任という訳にはいかない。
マスク不足が明らかになるにつれ、手作りマスクの方法が新聞やネットで多く掲載された。我が家では花粉・インフルエンザ対策のため使い捨てマスクは若干の買い置きはあったものの、コロナウイルスの長期戦が予想される中、家内が作製を始めた。初孫の安産を神社に祈願した時にいただいた腹帯用のさらしを生地に作ったが、これが実に塩梅よく、一日1時間程度の買い物兼散歩に常用している。娘家族のその孫も現在小学生になったが、夏浴衣の甚平さん生地のマスクをご機嫌で愛用している。
一般用マスクは元々、防寒・花粉症・風邪・防塵などのために用いられ、俳句の季語では冬である。ガーゼタイプと不織布タイプがある。ガーゼタイプは洗濯して再利用できるため日本では昔から広く愛用されてきたが、性能が劣るのが欠点で、現在は使い捨ての不織布タイプが主流となっている。
マスク着用の習慣は日本では、花粉症の流行、2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年の新型インフルエンザの流行などを経て、2018年には冬場は4割以上の人がマスクをするほど定着した。世界的には排気ガスや無舗装道路でオートバイに乗る東南アジアで多く使われている。欧米、特に米国ではマスク着用の習慣がない。米国ではマスクは犯罪者が利用するため、理由なしでのマスク着用を違法とする州が多く、慌ててこの法律の効力を停止した。最近では香港で抗議活動対策のため覆面禁止規則を発したのが記憶に新しい。
コロナ流行の当初は、顧客対応の店員が「マスクは客に失礼」と禁じた例もあったが、途中からは”客を守る”ためにマスク必須となり、着用が常識となった。これから暑い時期にはなるが、熱中症対策を十分した上で、マスクを着用して自分も周りの方も守り、この危機の終息を祈念したい。