2020年10月1日
アドバイザー 加藤 洋男
今年はコロナの影響でなかなか実家への帰省がしにくくなり、政府からは“オンライン帰省”なるものが奨励されている。否応なしに「ふるさとは遠きにありて思うもの」になってしまう。帰省がままならない中で、都心にある地方のアンテナショップが盛況とのことだが、“せめてふるさとの品で身近に懐かしむ”という気持ちはよく分かる。
年齢を重ねると、両親はもちろん実家を継いだ兄や幼い頃から親しかった友人達までが鬼籍に入り、ふるさとを訪れる機会は激減して年1~2回の墓参りと中学校の同窓会に行く程度となったが、今はこれも出来ない。町の中心だった地区はシャッター通りと化し、子供の頃は道行く人の大半は顔見知りだったが今は当然のことながら知る人はいない。格好の遊び場だった小さな山はホテルが建ち、お盆の頃に花を咲かせた一面の蓮田は住宅地となり、「兎追いし彼の山 小鮒釣りし彼の川・・・」の昔の面影を残すものはほとんどない。
2008年から「ふるさと納税」が始まった。これは地方間格差や過疎による税収減少に悩む自治体に対して格差是正を推進するためにスタートした。成人まで教育に税金を注いでも納税者になると他地域に移住していて元をとれないのでこの制度はよいという意見や、都会の地区は税収が大幅に減って困るという実態もある。ふるさとを思う気持ちや、何かの縁で行う場合もあるが、返戻品の魅力で自治体側と納税者側の双方の思惑が合致しそれが過熱して問題になった例も多い。2018年の実績で納税額は5000億円を超える規模になっている。
自分のふるさとに心置きなく帰って懐かしい場所を訪れ、古き友と自由に会話し、心を癒すことが出来る状況が一日も早く来ることを期待して、人と会うのが非日常で会わないのが日常という今の生活を乗り越えていきたい。