コーヒータイム(54)体温計

2020年12月1日
アドバイザー 加藤 洋男

今年もあと1カ月を残すのみとなったが、新型コロナに生活を大きく変化させられた1年だった。日頃の生活は3密を避け、外出を控えることは当然のことだが、風邪や熱にひときわ敏感になった。過保護なほどに寒さを避け、少々の体調変化にも熱を測るようになったが、その都度びくびくしながら測温結果を見るので、神経には悪い。

これまでは38度に迫るような熱があっても、医師の診察を受け、薬を飲んで休み、いつの間にか回復し、安堵していた。体はきつくても精神的苦痛を伴うことはなかった。

我が家では体温計は家族で共用していたが、コロナ禍の現状を踏まえて、個人毎に持とうということになり、体温計を買いに行った。ところが薬屋さんを5件回ったが一様に「今日の入荷はありません」の回答。仕方なくネット通販で探したら何と通常価格でいくらでもある。しかも依頼した翌日には手元に届いた。この流通はどういうことなのだろうか。私が求めたのは一般的な腋の下に入れるタイプだが、欠点は計測終了の合図の電子音が小さいことである。難聴気味な私にとって、この音の波長が苦手の範囲なのか全く聞こえないので、身近な人に手数をかける。

体温計は1600年代初めにはあったようだが、一昔前の定番はアナログ式で水銀を利用したもので、使用前の目盛りに戻すため何度も振る必要があった。しかも損傷して有毒の水銀流出の危険があった。

現在のタイプは1980年代に出た。電子回路を使用したデジタル式で、スピードも安全性も画期的に改善された。日本ではこのタイプを家族共有で使用するのが一般的だ。欧州北部では肛門挿入が主流で、米国は舌下計測、いずれも歯ブラシのように個人個人がマイ体温計を所有する習慣があるという。

コロナ禍の現在は、頻繁に人が訪れる場所では額や手首を遠赤外線で測る温度計や、更に多くの人が集まる病院、ホテル、デパートなどではAIを搭載したウォークスルーで顔認証方式の検温装置が使用されている。

これから冬場を控えコロナは予断を許さないが、体温測定結果に一喜一憂する状況から早く脱出する日が来ることを念じて、日常生活を更に気を引き締めたい。

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