コーヒータイム(56)散歩

2021年 4月1日
アドバイザー 加藤 洋男

コロナ禍にあって家に籠ってばかりの運動不足を解消するため、天気のよい日は家内と1万歩を目指した散歩を始めた。この地に住んでから4半世紀になろうとしているが、地域の事は殆ど知らなかった。それでも地図や地図アプリも持たず、あちこち散策すると少しずつ様子が分かり始めた。地域の南側は大きな川が流れ、台地には国指定文化財の遺跡もあり、往時の営みが想像され、古代にこの南側から先に開けたようである。一方、北側は雑木林を切り開いた広大な旧日本軍や米軍基地の跡地に、国や民間の大きな施設や公園が建設され、新興住宅街が並ぶ。

新旧のいわれがある地が、散歩のお陰でこれまで点であったものが漸く線で結ばれるようになりつつある。ところが私の方向感覚は怪しい限りで家内の言うことに従った方が間違いない。ただ、家内の直観もまま外れることもあるが、二人で迷走することも歩数アップにつながると前向きにとらえている。京都のごとく碁盤の目のように街が直線的に開発されていれば分かり易いが、区画整理が行われていない曲がりくねった道は私を悩ませる。道や線路を直線的に考えるしまう癖もあり、目的地に着くために先入観で歩いて、三角形の斜辺を行けば近いのに、他の二辺を辿ってしまうことがよくある。

曲がっていることで有名なのは、新京成線だ。松戸から乗車して初富当りで進行方向右側に富士山が見えるのがどうも理解出来なかった。感覚的には見えるとしたら後ろ側だ。そう思って地図を見たら、新鎌ヶ谷付近で鋭角的にカーブしている。確かに市庁舎をぐるりと回る感じになっていて方向が大きく変わるために富士山が見えることに得心出来た。山道でもないのにくねくね曲がっていて、松戸から京成津田沼まで直線では約16kmだが、線路は26.5kmの距離になるという。この線は旧帝国陸軍が大陸進出に備えて昭和初期に敷いた演習線だそうで、カーブが多いのは、長い線路を作る必要から距離を稼ぐため、あるいは演習用にあえて難しいカーブを作ったなどの説があるという。戦後民間へ払い下げられ一部はカーブを修正したりして1955年に全線が開通したそうだ。

今年の桜は史上最速の早さで開花したが、入学、入社など桜が似合う行事と年々離れた時期になっているのは寂しい気もする。しかし他の花々も負けじとその蕾がほころびつつある暖かい季節になってきた。近隣の空いている広場に出かけ、お弁当をひろげてピクニック気分を味わうことは、コロナ禍の気分を和らげ、運動不足を解消する一助になるように思う。

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