2022年12月1日
アドバイザー 加藤 洋男
今年の冬はラニーニャ現象なる異常気象の影響で寒いと言われているが、10月は1カ月の間に冷房と暖房の両方を使う不順な天候だった。近年は春と秋の期間が短くエアコンは長時間労働でオフシーズンをゆっくり休む暇がない。
私は関東出身だが子供の頃は部屋全体を暖めるものはなく、火鉢とこたつで暖をとっていた。しかも火鉢もこたつも熱源は木炭で火事の危険があるため、親が不在の時はこたつは禁止だった。火鉢は熱した木炭に灰をかぶせ、使う時だけ灰をよけて暖をとる。夏目漱石の短編小説「火鉢」に”手だけ熱くて背や肩はむやみに寒く足の先は冷えて痛いくらい”とあるとおり、部屋を暖めるまではとても出来ない。建物自体もすきま風がスースーで、結構寒い思いをした。それがため夜は早めに布団に入るのが習慣だった。毛布でなく掻い巻きと称した袖付き綿入れの布団で肩までスッポリ。母は冷え性とかで湯たんぽが欠かせなかった。
1950年後半になると、こたつは電気になり、火鉢から灯油ストーブになって、部屋の暖気確保はかなり改善されたものの、灯油ストーブは乳幼児の安全確保に神経を使ううえ、灯油の保管場所にも気を使った。又この灯油が不思議と寒い夜間に切れて結構扱いにくい存在だった。この頃になると実家の母は電気毛布を使い、かなり快適に過ごせたことと思う。
オフィスやホテルなど大型の建物では蒸気暖房が多く使われたが、欠点は休日後などに弁を開けると「カンカン!!」とウオーターハンマー現象と言われるかん高い音が出ることだった。写真は約100年前の奈良ホテル創業時のもので現在はオブジェとして展示されている。
家族でこたつに入ってミカンを食べるのは家族団欒の象徴で冬の風物詩だった。
現在はエアコンの時代になり、快適性、安全性に優れた物の恩恵に浴しているが、近所に住み、床暖房の生活に慣れた小学生の孫は我が家へ来ると、こたつに潜ってテレビを見たり、ゲームをすることを好んでいる。時代が変わっても心の暖かさを感じるのは変わらないのかも知らない。
寒い季節こそ血流改善や筋肉鍛錬のためにウオーキングがよいと言われる。「♪・・猫はこたつで丸くなる・・♪」ではなく外へ出ることが大切と思う。