コーヒータイム(67) 焚き火

2023年2月1日
アドバイザー 加藤 洋男

♪ 垣根の垣根の曲がり角 焚き火だ焚き火だ 落ち葉焚き・・・・~♬ のとおり日本人は晩秋から冬の風物詩として庭や寺社の境内など街のあちこちで枯れ木や落ち葉を燃やしていた。時にはさつまいもを入れたが、その美味しさは忘れられない。
 新築中の家では職人さんが端材に火を起こし、棟梁が来る頃はボーボーと燃えていた。こちらは落ち葉の焚き火より断然勢いが違って遠巻きにあたってちょうどよい。今では家の建築は材料を工場で整えてきて現場でクレーンで組み立てるだけだから、カンナもノミもいらない。ましては端材もないから焚き火もない。

焚き火で想い出すのは三島由紀夫の恋愛小説「潮騒」だ。昭和29年に発表され、その後映画やテレビで何回も放映された。三重県の島を舞台に少年と少女の淡い恋物語は焚き火から展開される。 現在では、焚火をするような広場も少なくなったうえ、火災予防、煙害、誤報防止などの観点から、法律上の“禁止”ではないものの、いろいろな制約があって殆ど見られない。

火を焚くこと自体は50万年前の北京原人の遺跡にも 火の跡が残っているそうで、長じて調理、照明、狼煙 などに利用された。炎や火は信仰が寄せられることがあり、宗教的に行われる火祭りや、護摩(ごま)焚き、篝火(かがりび)などがあり、日本伝統の薪能もその一つである。
 物を燃やすという点では焼畑農業がある。主に熱帯地域 のやせた土地に火をつけて土壌改良を目的に行われた。日本でも古来から山間地を中心に行われてきた。安価な点はあるものの発生する煙による大気汚染や山火事などの保安上の理由で、現在は激減している。また畑の残茎、藁、葉などの残渣処理や雑草や害虫防止のための野焼きも同じ理由で世界的に禁止の方向である。

 最近、私たちの身近で火を焚くものを見ることが出来るのは、お寺での護摩焚き、古いお札などお願いする神社でのお焚き上げ、キャンプファイヤーくらいだろうか。

古く、“子供は風の子 大人は火の子”とあるが、子供と同じようにはいかないものの、大人も“火の子”にならず、出来るだけ外へ出て健康な身体を心がけていきたい。