コーヒータイム(69)橋

2023年6月1日
アドバイザー 加藤 洋男

  最近、四国を旅する機会があった。四国は初めてで各所とも思い出に残る名所だったが、中でも印象深かったのはいくつかの”橋”だった。
一つ目は「祖谷いやのかずら橋」。徳島県三好市にあるが、長さ45m、幅2m、高さ14mの吊り橋で、現在のものは安全のためワイヤーを使いかずらで包み込んでおり、3年に一度架け替えられている。起源は、平家の落人がこの地に住み、追手が来たらすぐ切り落とせるようにかずら使ったなどの説があるようだ。山深い奥地での先人の知恵が凝縮されていて、重要有形民俗文化財に指定されている。よく揺れて、下の渓流が丸見えなので高所恐怖症の方には少々厳しい。怖いので欄干部分を両手でつかみがちだが、むしろ片手つかんでまっすぐ歩いた方がスムーズだ。

二つ目は「四万十川の沈下橋」。四万十川は四国最長の川でテレビのサスペンスドラマの舞台で有名になった。高知県は台風が多く、暴れ川のため頻繁に氾濫するが、川が増水すると水中に沈み、欄干がないので流木等が引っかからず、橋が壊れる可能性が少ない。沈下橋は本流支流で47本あるが、自然に逆らわず受け流すという地域の特性を活かした生きざまと、ほっこりした景色が心を和ませてくれる。

 三つ目は技術の粋を集めた本州と四国を結ぶ橋だ。明石海峡大橋、瀬戸大橋、しまなみ海道の3ルートで、いずれも1980年~90年代に開通した。しまなみ海道は尾道と今治を結び、世界初の三連吊橋の来島海峡大橋を中心に10橋。歩行者、自転車が通行できる側道があり、世界で最も素晴らしい自転車道の一つとして紹介されている。隈研吾設計の亀老山展望公園からの景色は絶景だ。

現在日本全国で約72万6千の橋があるそうだがアーチ・吊りなどの形、石・木などの材料、車・人などの通行対象、そしてその歴史など様々に興味深い。私たちの身近にも橋はある。健康を兼ねて橋巡りをすることもよいかなと思う。