コーヒータイム(70) 盆踊り

2023年8月1日
アドバイザー 加藤 洋男

コロナ禍で中止されていた夏の風物詩である盆踊りや花火大会が各地で復活しつつある。古来続いていた伝統の行事が再び行われる知らせは、昨今の異常な自然現象、物騒な事件、戦争など暗いニュースが多い中で、しばし心が和むひとときを与えてくれる。

盆踊りの起源はいろいろな説があるようだが、盆入りの8月13日にご先祖様の霊が戻って来て8月16日にお帰りになるお盆と結びついた行事というのが一般的だ。それに加えて地域の人たちの交流の場であったと思う。

私が子供の頃、町内毎に盆踊りが行われ、婦人会の皆さんを中心に、リーダーが櫓の上で模範を示して、周りの人はそれを見て覚えた。私の母もこれを楽しみにしていたようで、その頃の夜は浴衣を着ていそいそと出かけていた。その手の行事に関心の薄い明治生まれの父は、それを快く送り出していたかどうかは疑問の空気を子供心に感じていたことを思い出す。

その後、この輪踊りとは別に市全体の行事として道路を練り歩く流し踊りが行われたが、そのエネルギー溢れた「連」の熱気に圧倒された記憶がある。

長じて企業人になって地方の工場では盆踊り大会が活発に行われていた。市全体としては長年輪踊りが大々的に行われていたが、ある年から流し踊りが企画され、企業にも参加要請が来た。「よしきた!」と若手を中心に参加したが、若者のエネルギーにはゆるやかな伝統の踊りでは全くテンポが合わない。ついにはたまりかねて倍速のスピードで踊り出した。威勢の良い踊りに市長、商工会議所会頭や沿道の観客からも絶賛された。ところが後日の反省会で、踊り大会の実権を握る長老男女から、「神聖な伝統ある踊りを汚した」との厳しいお叱りを受けた。いやはや物事は簡単にはいかない。

暑い夏の夜だが、水分補給を十分にして夏の風物詩を楽しむことは、気分の上で一服の清涼剤を感じられるかも知れない。