2024年2月6日
皮膚科医師
芳川万代
「物忘れ」と「認知症」
年齢を重ねると、色々と「物忘れ」が多くなってくるのはなぜでしょうか。年をとれば神経細胞が減っていくので記憶できる総量が減ってくるのはやむを得ません。しかし、適宜捨ててきたとはいえ長年にわたって蓄えられた記憶量は相当なもの。必要性の低い記憶を残しておく余裕はないため「物忘れ」が多くなります。もう一つは、年を重ねるにつれて経験が増え、新鮮に思えるような新しい出来事が少なくなるため、多くの事をさりげなくこなすことができ、記憶には残りにくくなるからという理由です。「認知症」の定義は、厚生労働省によれば”脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態”を指します。加齢による「物忘れ」は多くの場合、生活に支障はなく、「認知症」になったわけではないのです。
脳寿命を伸ばすためには
脳の健康寿命を伸ばすために大事なのは以下の3つです。
1. 睡眠・食事・運動
2. 音楽を聴く
3.「集中系」と「分散系」を交互に活性化させる
1. 睡眠は記憶のメンテナンスをする時間であり、脳内老廃物排出システムも夜間睡眠時に活性化することが知られています。食事も脳のメンテナンスにおいて重要です。まず大事なのは「脂質」特に「オメガ3系不飽和脂肪酸」が重要で、サプリとして摂取すると認知機能改善に役立つとされています。他に、「タンパク質」「炭水化物(糖質)」もバランスよく摂る必要があります。また、運動することで、筋肉から様々な成長因子が分泌され、それが脳に届いて、ニューロンを細胞死から守ったり、認知機能を改善させたり、脳の慢性炎症を抑える働きまであることがわかっています。運動の強さについては、「自発的に、気持ちの良い範囲で」がキーワードとなります。
2. 好きな音楽を聴くことで、様々な脳領域の血流が増えます。特に高齢者においては、記憶力の向上やうつ症状の改善に有効です。
3. 「集中系」というのは目的を持って何かの仕事に集中している時に活性化する部分で、逆にその時に抑制されている部分が「分散系」です。両者は互いに抑制し合いながら作用するため、両者を交互にバランスよく活性化させていけば、それぞれに適度な休息を与えることになり、脳の健康寿命は伸びていきます。下の表は両者の例です。