6. 不足しがちな栄養素  part1 ~鉄~

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2021年10月20日
皮膚科医師
芳川万代


鉄、摂れてますか?
必須ミネラルである鉄は、血液の成分のひとつである赤血球のなかのヘモグロビンをつくります。呼吸して取り込んだ酸素は、このヘモグロビンと結びつき、全身に運ばれます。そのため、鉄がなければヘモグロビンをつくることができず、全身の細胞は酸素不足になってしまいます。最近の厚生労働省の調査によると、男女ともに幅広い年代において、鉄の平均摂取量が推奨量を下回っています。特に女性の摂取量は大きく下回っており、積極的な摂取が求められます。
鉄が不足すると、疲れやすい、頭痛、動悸、食欲不振などの症状が出ますが、あまり自覚症状がない場合もあります。

鉄と皮膚の関係
鉄が不足すると、皮膚の新陳代謝がスムーズにできなくなり、乾燥肌やしもやけなど皮膚のトラブルが起こったり、アトピー性皮膚炎の引き金となります。また、皮膚のうるおいに必要なコラーゲンの合成には十分な酸素が必要で、その際、鉄とビタミンCが使われます。コラーゲンは皮膚だけでなく、髪や目、筋肉、骨など体のあらゆる部分に含まれているので、コラーゲンが不足すると、抜け毛や筋力の低下、骨粗しょう症などが起こりやすくなります。加えて、肌のシミの原因となる活性酸素は、鉄から作られる「カタラーゼ」という抗酸化酵素によって無害化されます。つまり、鉄を十分に摂っていれば、シミやくすみも改善できるというワケです。

鉄のじょうずな摂り方
鉄はもともと体内に吸収されにくいため、効率的に摂ることが大切です。鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があり、ヘム鉄の方が体内によく吸収されます。ヘム鉄はレバーや赤身肉、卵黄、マグロ、カツオなどの動物性食品に、非ヘム鉄は植物性食品に多く含まれています。非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂ると吸収がよくなります。タンパク質にも吸収を高める効果があります。
また、一緒に食べることで吸収率を下げてしまうものもあります。コーヒーや紅茶、緑茶、ウーロン茶等に含まれる「タンニン」は鉄の吸収率を下げるため、食事中や直後に飲むのは控えましょう。また、スナック菓子や清涼飲料水などに含まれる「リン酸塩」も鉄の吸収を阻害する働きがあるため、注意しましょう。
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まとめ
鉄は一度に吸収される量が決まっているため、吸収できる量以上の鉄を摂取しても排泄されてしまいます。1日3回、栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。