(1)ツバメの巣

zuiki

2018年 7月 1日
理事 德田 好美




大和(やまと)路の 宮もわらやも つばめ(かな)蕪村

今年も早や半年が過ぎた。地球の自転速度が早まったのでは…と疑いたくなるほどだ。なのに、この半年の間に何があっただろうと考えてみると、どれもこれもはるか昔の事のように思えたりする――なんとも奇妙な感覚だ。
そんなこんなを思いかえしているうちに、ふと、このところツバメの姿をあまりみかけないのに気が付いた。いつもだったら、春から夏にかけて群れをなして飛んでいる姿が、季節の代表的な風物詩なのに、今年はその映像がなかなか目に浮かんでこない。

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街中でも、ツバメは人家の軒下に巣作りをして、卵を産む。(かえ)った雛たちが、親鳥がくわえてくるエサを待ちわびている。そういう姿が春の定番だが、最近の住宅の傾向では、軒先が短くなったり、軒下そのものがアパートメント化のためなくなったりして、巣作りできる環境が急速に減っていることがその原因ではないだろうか。

そう云えば、毎年春我が家の2階の戸袋の中に巣作りをして家内を困らせている雀も、今年はその動きが鈍いようだ。先日の朝、カサコソと音がしたので、戸袋の中を覗いてみると、わずかばかりの藁くずが散らばっているだけで、巣の完成には程遠い。きっと、まわりの田畑がすっかり消えてしまって、この付近では巣作りの材料となる藁くずなどがなかなか手に入らないのに違いない。

今まで、いささか厄介だと感じることもあった小鳥たちのこれからに思いが及ぶと、人間本位の便宜性だけを考えて、自然の営みをおろそかにし兼ねない現代建築のありかたに、疑問符を付けざるを得ない。ツバメたちが、また瑞気を運んできてくれる日の来ることを、待ち望む気持ちでいっぱいだ。