
2018年 9月 1日
理事 德田 好美
たべ飽きて とんとん歩く 鴉の子高野素十
我が家の庭に直径20数センチのつくばい(水鉢)がある。別に実用性があるわけではないので、うっかりするとつい水替えを怠りがちだ。
が、いろんな小鳥がやって来て水浴びをするのを見かける度に、水はいつも 綺麗にしておかねば、と思う。というのも、水替えを忘れた日は、小鳥たちも水浴びを敬遠するのだ。小鳥たちの本能は、私などの想像をはるかに超えて、自然の理にさといものがあるのだろう。
水浴びに来る鳥は、つくばいの大きさに合った小鳥たちばかりで、それも至極当たり前のことだろう。

ところが先日、鴉が水浴びして行ったよ、と家内があきれ顔で報告した。鴉も場所に事欠いて、とうとうこんな所までやって来たのだろうか。
「鴉の行水」というたとえがあるように、鴉はさっとひと浴びして直ぐ飛び去ったのだろうが、それにしても鴉が羽を拡げれば50センチは優にあるだろう。
あんなに小さい”つくばい”では、羽を拡げることもできなかったのではないか。いかに鴉の行水とはいえ、満足した水浴びが出来たとは、とても思えない。
鴉は、鳥の中でも知能指数がひときわ高いと聞く。このところ、ごみ置き場あさりなど手に余るものがあり、近所中の怨嗟の的になっている鴉だが、彼らも生きていくのに懸命なのだ。
幾ばくかの同情の念を催させる出来事ではあった。