
2022年 9月 1日
理事 德田 好美
わが袖に ふと現はれし 秋の蝶高浜虚子

今年の八月は、2年ぶりに開催された甲子園での全国高校野球選手権大会を楽しんだ。
筆者が少年の頃は、学制はまだ旧制で、「全国高校野球…」は「全国中学校野球大会」だった ―(当時の中学は5年制)― 筆者が通った中学は、地域では一、二を争う野球強豪校の一つで、四才上の兄が一塁手を務めており、地方予選にはいつも応援に駆け付けたものだ。
そういう関係もあって、各地の高校同士の熱戦を観戦し、故郷九州勢と現地千葉県勢の活躍を応援したが、決勝に残ったのは本州の北<仙台育英>と南<下関国際>の対決となり、結果は周知のとおり全国の参加校3547校、甲子園出場校49校のトップに立ったのは、前評判の高かった大阪桐蔭などをさしおいて宮城の仙台育英となった。
そこまでは、各チームそれぞれの努力と運の僅かな差が、この結果を導いたものだと、拍手を送ったわけだが、ただ一つ意外だったのは、東北勢の本戦優勝はこれが初めて、という事だった。過去の戦績を見てみると、東北勢は何度も決勝戦に臨んでいるが、確かにすべて準優勝に甘んじている。応援する東北の皆さんの喜びは、並大抵のものでは無かったろう。
それにしても、仙台育英―須江航監督の優勝時の挨拶は心に残る。
<……コロナに影響され、いろいろと駄目だと言われる苦しい中で、あきらめないでやってくれた。それは我々だけじゃなく、全国の選手たちが、暗い中でも走り続けてくれた。そういう高校生たちの努力の中で、たまたま我々がここに立ったに過ぎない。ぜひ全国の高校生に拍手をして頂きたい……>
この、指導者の謙虚さが、最後の星をつかむ原動力になったのではなかろうか。
熱戦が終ってふと気が付けば、外は秋風の季節となっていた。