(29)秋の雨

2023年 9月 1日

理事 德田 好美

霖雨(りんう) 雀ら白き飯好む   今枝 茘枝(れいし)

今年は、夏が過ぎたとはいえ、毎日暑い日が続く。報道によれば今夏の暑さは、従来の記録を塗り替えているようだが、それにしても尋常ではない。これも地球温暖化の確かな現象の一つだろうか。

冒頭句の<霖雨>とは、いつまでも降り続く長雨のことを指しているが、現在の当地の状況は、8月から9月にかけて殆んど雨が降らない毎日だ。たまには雨よ降れ降れと祈りたくなるような気分にもなる。

そのような状況のもと、付近の森や林が人家の開発によって次々に消えていくこの一帯で、雀などの小鳥たちはどのような生活を送っているのだろうか。普段はあまり気にかけたこともないが、我が家の庭に実っている葡萄の実が、小鳥たちにまだ青いうちから(ついば)まれるにつれ、彼らの日常が何となく気になって来る。

そう言えば、雀や燕が集団で空を飛んでいる光景を以前ほど見かけなくなったような気がするが、自分たちの食べ物の在りかはきちんと心得ているのだろう。

ところで、そういう小生のつまらぬ観察とは無関係に、妻は以前から小鳥たちの為に、白いご飯を鳥たち用の小さな皿に入れて、庭木の合い間に置いてやる習慣がある。

…むしろ句とは逆に雨が降らぬ日が多い…小鳥たちはいかにも待っていたかのように、これこそ自分たちのものだと、妻が置いた途端にどこからか飛んできて啄んでいく。のどかな日常である。