(5)雑草

zuiki

2019年 3月 1日
理事 德田 好美




つゆ草の芽ということがわかるまで中田みづほ

早くも三月。 庭のあちこちや植木鉢の草取りに忙しい季節となった。かつて農家出身の友人が(父親からいつも、草は芽が出る前に抜くのだと叱られていた)と言っていたのを思い出しながら、腰をかがめて草取りをする。完全に除去したはずの雑草が、翌日はもう芽を出す。そもそも植えもしないのに生えてくる。

我々は自分たちに都合の良いもの…きれいな花が咲くかどうか、食用や薬用に 使えるか…と、我々本位に選び出したものだけを大事に育て、そうでないものは一括(ひとくく)りに雑草として邪魔者扱いにする。が、人にちやほやされるもの程ひ弱で、邪魔な草ほどたくましく、しぶとい。これはいったい何故だろう。

<雑草という名の植物はない>とは、昭和天皇のお言葉だと聞く。
zuiki201903 さすがに植物をこよなく愛されたお方の名言だ。もしその境地に達することが できれば…我々にとっては至難の業だが…上の疑問は解けるかもしれない。
冒頭の句の<つゆくさ>も、世間では雑草の一つだが、夏から秋にかけて、可憐な花を咲かせる。書物によれば、扁桃炎やあせもなどの消炎剤としても効果があるという。ならば何時かは、人間にちやほやされて雑草扱いから脱する時期が来るのだろうか、しかし果たしてそれは、つゆ草にとって幸せなことなのか。

続々と頭を出す雑草に、そんなこんなの親近感を覚えながら、それでも日々草取りをする今日この頃だ。